「人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか」(森博嗣著)感想
人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書)
- 作者:森 博嗣
- 発売日: 2013/03/15
- メディア: 新書
考えることそのものについての話です。書いてある主題はタイトルにある通りです。
終始、抽象的に考えることについて書かれています。
具体的にすればするほど、伝わりやすくなるものの、そこから得られる本質みたいなものから遠ざかってしまう。物事の本質を捉えられるようになるためにはどうすれば良いのかが、抽象的に書かれています。
抽象的な話をしているので具体的な解決策や手法などは、書かれていません。書いてあることが多少、難しいので、読む人を選びそうとは思いました。
課題の発見は成長
何を考えれば良いのかということがわからなければ、考えることもできないのである。
だからこそ、研究者というのは、問題を抱えていることを、かけがいのない幸せだと感じる。
仕事でもよくあることだなと思います。課題を課題と捉えること自体が、実は課題だったりするんですよね。
課題もっとライトに疑問を抱いたとき、現代社会だとそれをすぐにググって解決できてしまう。ただ、その疑問はそこで理解したつもりになってしまっては危険なんだと気づきました。抱いた疑問は、もしかしたら他の疑問の解決に通じているかもしれないし、また別の疑問を生み出すかもしれない。すぐにわかることで得られる安心で、その先を考える習慣が奪われてしまったのかもしれない、と思いました。
情報が手に入りやすいからこそ、得た情報を自分の中で再考し直す必要があります。昨今であればSNSで簡単にデマが広がります。みんな目にした誰かの意見を100だと考えてそこで満足して終わってしまうのです。
直感を信じてすぐ判断するんだ!それは積み上げた己の経験だ!みたいな本も見かけたりしますが、やはり必要なのは反応ではなくそれをどう処理するか、一人一人の対応が必要だよなぁ。と思います。具体的な物事の方がわかりやすいし、人はわかりやすい方に流れやすい。だからこそ、同じものをみて課題を発見できる人間になりたいなと思いました。
多かれ少なかれ、何か未来に影響する
ぼんやりと考え、適当にやったことでも、地道に続けていれば、全体としては「自分が望む」方向へ変化し、しかもそれらは蓄積して、自分が望む「世界」がだんだんと近づいてくるのである。
第五章からの引用ですが、この辺の文章、本当に好きだなぁと思いながら読んでいました。
人の頭は自然なので、常に雑音があり整備していくのはとても大変です。私もつい、Twitterを眺めて時間が思った以上に過ぎていることが、結構あります。でも、脳内リソースは限られているので、考えるためのスペースをきちんと確保して、整備していかなければいけません。
余計なものを置かないようにして、自分の取り入れたいものを意識的に取り入れていく。日々の考え方の方向性や取り入れる情報によって未来の自分が作られる。であれば、できるだけ、快適に思考する脳を作れたらいいなと思いました。
コーヒーを入れる時間
この本を読んで、めんどくさいと思うことも考え直してみると大事な時間なのかもしれないと、普段の生活を振り返りました。
平日の我が家では、コーヒーを入れるときはカプセル式が主で、カプセル式だと、コーヒーが1分もしないうちにいれられます。
一方、週末になると一度は豆の状態からコーヒーを入れるのです。
豆を機械ですりつぶして、コーヒーフィルターに粉を移し、コップをあらかじめ温めておき、沸騰したお湯を少し冷まして80度くらいにしてから、1回しだけ粉にお湯をかけて1分蒸らして、それからのの字を書くように少しずつお湯を入れていく。
普通に考えるとこの作業は時間がかかるしめんどくさいのです。でも、私はこの時間がすごく好きなんです。
コーヒーの香りが強く感じられていて、旦那の分と2人分入れるので寝ている旦那がコーヒーが出来上がるのと同時に起きてくるのを想像したり、お湯を入れた瞬間にコーヒーの粉がモコモコする様が美しいなと思ったり、作業をしている間すごくいろいろなことを考えます。
この本を読んで、あぁ、こういう時間がとてつもなく大事なんだなと思いました。